大沢在昌はいつの間にラノベ作家になってしまったのでせう? | 『Go ahead,Make my day ! 』

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【オリジナルのハードボイルド小説(?)と創作に関する無駄口。ときどき音楽についても】

いや、この作品のことなんですが。

カルテット1 渋谷デッドエンド/大沢 在昌

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カルテット2 イケニエのマチ/大沢 在昌

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カルテット3 指揮官/大沢 在昌

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カルテット4   解放者(リベレイター)/大沢 在昌

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いつだったか、「オオサワアリマサはもう終わってるよなー」という趣旨のことを書いた記憶があるのですが、商業作家としてはまだ第一線(?)でご活躍なのですね。
とは言え、本屋で手にとってパラパラと呼んでみる限り、作品的にはすでに過去の作品の縮小再生産モードに入っているようなので、新刊が出ていても「ああ、そうですか」という感じでスルーさせて戴いておりました。

この作品を手にしたのも、実は「へえ、大沢在昌原作のコミックが出たのか~」と勘違いしたからだという……(笑)

内容ですが、それぞれに複雑な過去や家庭の事情を持つ3人の少年少女と1人のはぐれ刑事(純情派ではないよ)の4人がチームを組んで様々な事件に関わっていくというものだとか。
(だとか、というのはあまりのつまらなさに最初の10ページほど立ち読みしてやめたから。笑)

いやあ、文体こそ熟練の大沢節健在という感じですが、なんというか、もうまるっきりラノベ。

何の技術的根拠もなく脳移植で別人になる「天使の牙」のようなムリヤリ物から、荒唐無稽で無茶苦茶な「アルバイト探偵」シリーズなど、トンデモ設定の作品は過去にいくつもある筈なのに、それとは確実に一線を画するしょうもなさが溢れているのは何故なのでしょう?

一つには、作者の自分の作品(というか登場人物)への自己愛がプンプン臭っているのが理由のような気がします。
まあ、これは大なり小なり誰にでもあるものですが、気をつけないと作者の思い入れの一方的な押し付けになる傾向があって、共感力の低い読者(わたし)などは、

「ああ、そうかい。おまえの思い入れなんか知ったことか」

と言いたくなるのですよ。シリーズ物などを多く書く作家が陥りやすい罠ですね~。

あとはもう、大沢作品に描かれる渋谷や六本木が(実在とは異なる架空の街であることを差し引いても)完全に記号化してしまっていることでしょうか。
もともと、この人が描く六本木や渋谷はいわゆる70年安保時代後からバブル経済期の、いわゆる日本右肩上がりのスタイシッリュで華やかな時代を下敷きにしていて、「俺達しか知らない特別な街なんだぜ、へへん!」的なスノビッシュな空気が漂っているのですが、怖ろしいことに今でもそうなのですね。

AMAZONやその他のレビューでは内容云々よりも出版形態(1000円以上するのに1冊200~250ページ前後。しかも挿絵入り。装丁や紙質もかなり悪し)への批判が多いようです。個人的に表紙の絵柄は嫌いではないのですがね。

(誰なんだろ、この絵描いたの?)